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直売所から学ぶ成功の秘訣!山元町のイチゴブランド化に見る売れる商品づくり

1.はじめに

宮城県山元町にある「やまもと夢いちごの郷」は、地域の特産品であるイチゴを中心に、直売所としての視点からブランド化や商品開発を推進し、地域を盛り上げている施設です。今回は、取締役支配人 馬場健保さんと主任 貴志由寛さんに、消費者に最も近い直売所の視点から、売れる商品や地域特産品のブランディングのポイントについて教えていただきました。

2.直売所の視点から見るブランド化の成功要因

(1)地域と行政の連携によるブランド化

「やまもと夢いちごの郷」は、直売所として山元町のイチゴを地域の復興シンボルとして位置付け、行政と連携しながらブランド化を進めてきました。震災により農作物の生産が滞ってしまっていましたが、このままではいけないと農家の皆さんが立ち上がり、イチゴの生産に力を入れ始めました。そこに行政が注力し、イチゴを中心としたブランディングが行われていきます。「やまもと夢いちごの郷」も最初はイチゴをメインに販売していたにもかかわらず、需要に対してイチゴが足りないという問題が発生していました。この問題を解決すべく行政とも連携し、結果として、直売所にイチゴを出荷してくれる農家さんの数が増加し、地域全体でのイチゴのブランディングと生産が可能になりました。馬場さんは、「イチゴをメインの軸としてぶれないでやってきた」と語り、直売所としての一貫した戦略が成功の鍵であると語ります。

(2)メディアの力を活用したブランディング

メディアの力を活用することは、特産品の認知度を高める上で非常に効果的です。元サラリーマンの方が始めたイチジク栽培がメディアに取り上げられ、偶然「やまもと夢いちごの郷」が紹介されたことでさらに認知度が高まりました。ローカル番組にて紹介された日は問合せの電話が鳴りやまず、次の日には多くのお客様がいらっしゃったそうです。貴志さんは、「ここにも置いていますよ(販売していますよ)というPRをしたから問合せが増えた」と述べ、メディアを通じた情報発信は新たな顧客を引き寄せる大きな力を持っていることが分かります。

3.人気商品の作り方

(1)農家による商品開発と直売所の役割、加工品の展開

商品開発は農家の皆さんが主体となって行い、直売所はその商品を消費者に届ける重要な役割を担っています。これまで農家の皆さんは、地域の特産品であるイチゴを活用し、ジャムやドライイチゴ、アイスクリームなどの加工品を開発してきました。人気がある加工品の共通点は3つ挙げられます。1つ目は保存が効くこと。2つ目は包装が工夫されていること。3つ目は味が想像つかない突飛なもの“でない”ことです。

1つ目・2つ目に関しては、お土産として誰かに配ることを想定して購入される方も多いため、保存が効き、小分けできるようなパッケージが好まれます。また、パッケージのデザインも重要です。貴志さんは、「カラフルで可愛い商品であれば、並べるときに彩があり購買意欲をそそる」と述べ、商品の魅力を引き出す工夫が重要であると強調しています。

3つ目に関して、消費者の動向や声を直接見聞きしている馬場さんは「美味しければいいけど、チャレンジしてみようという商品では続かない」と述べ、消費者の期待に応えることの重要性を指摘しています。

4.消費者ニーズの把握

(1)消費者との直接的なコミュニケーション

直売所では、消費者との直接的なコミュニケーションを通じて、消費者ニーズを把握しています。また、農家の皆さんとも定期的に会議を行っており、直売所が情報共有の場になっています。これにより、消費者の声を迅速に農家に伝えることができ、商品改善や新商品の開発に役立てられています。

また、直売所のスタッフは日々の接客を通じて、消費者の反応や要望を直接聞くことができるため、リアルタイムで生産者へのフィードバックが可能です。さらに、入荷状況や商品の情報を消費者に伝えることもしています。例えば、今年のリンゴは猛暑のため全体的に柔らかいということが分かれば、貼り紙をし、朝礼でスタッフ全員に情報共有を行います。また、消費者からの「もっと小分けにしてほしい」「保存がきく商品が欲しい」といった具体的な要望は、商品ラインナップの見直しや新商品の開発に直結します。馬場さんは、「消費者の声を聞くことが、次の一手を考える上で非常に重要」と述べ、消費者との対話が持続的な商品改善の鍵であると語ります。

5.さいごに

「やまもと夢いちごの郷」の成功は、直売所としての視点から、地域と行政の連携、商品・品質へのこだわり、消費者とのコミュニケーションが鍵となっています。6次産業化に取り組む企業や生産者の皆様には、直売所の視点を活かし、消費者ニーズに応える商品開発を進めていただきたいと思います。地域の力を結集し、新しい価値を創出することで、持続可能な地域経済の発展を目指しましょう。

 

6.生産者の皆さんへ応援メッセージ

馬場さん:「季節やお客様の年代でニーズは変わります。早すぎるのも良くないし、押し売りするのも良くない。お客様のニーズに合ったものを開発することが間違いないです。」

貴志さん:「原材料が高くて大変だと思いますが、安くていいものをお客様は求めていますので、お互いに頑張っていきましょう。」

 

【取材協力】 山元町農水産物直売所 やまもと夢いちごの郷 運営:やまもと地域振興公社
〒989-2111 宮城県亘理郡山元町坂元字荒井183-1
TEL:0223-38-1888 FAX:0223-38-1889 HP:https://yumeichigo.jp/