はじめに
オンラインショッピングが普及した今、ECサイト運営は重要なビジネス活動の一つです。しかし、ただサイトを公開・運営するだけでは顧客のニーズに応えきれず、売上の向上も見込めません。そこで重要となるのが、ECサイトの継続的な分析です。本稿では、ECサイトの分析についてその目的やメリット、指標となるデータと分析ツール、そして取り組みやすくするためのポイントについて紹介します。
ECサイトの分析とは?
ECサイトの分析とは、サイトに訪れた人数やその属性・行動データを収集し、現状を把握するプロセスです。
この分析から得られる情報には、サイトを訪れた人の数や、流入元(SNS経由か、Google・Yahoo!などの検索結果からかなど)、最も閲覧されているページや購入率、どのぐらいサイトに滞在していたのかなどの多岐にわたる多くのデータが含まれます。
これらのデータを分析することで、「集客が足りない」「商品ページをさらに魅力的にして購入率を向上させる必要がある」といった、売上アップや顧客満足度に関する課題や目標をより明確にすることができます。
まずは現状把握から
ECサイトの分析において最初に行うべきは、現状の把握です。
例えば日々のアクセス数が少ないのであれば、メルマガを配信するなどアクセスを増やすための施策を行います。一方で、アクセス数が多いのに売上に結びついていない場合は、商品写真や説明文の変更を検討するなど購入率改善につながる施策を検討します。このように現在売上が伸びない理由は何か、まずはその手がかりを探ります。
以下は分析データを見る際、特に大事な指標となります。これらのシンプルなデータからでもショップの特徴を知ることができ、課題を見つけるヒントは沢山あります。
▼ ECサイト分析で見るべき代表的な指標
・売上や客単価(どのぐらい売れているのか?)
・アクセス数(どのぐらいの訪問者がアクセスしているのか?)
・流入経路(どこからサイトに来ているのか?)
・コンバージョン率・購入率(どれくらいの人が購入しているのか?)
・直帰率(アクセスした人のイメージに沿ったサイトになっているかの指標)
同時に次の数式を用いて具体的な目標を設定してみましょう。一定期間ごとに確認することで実施した改善策の効果を知る目安としても活用できます。
アクセス数 × コンバージョン(購入)率(%)× 客単価 = 対象期間の売上総額
それぞれの数値を向上させるためには次のような施策が一般的です。
「アクセス数」向上には、SNSや広告配信を使った集客施策が効果的です。「コンバージョン(購入)率」向上には、商品画像や説明文の改善などユーザー目線での対策が必要です。「客単価」向上には、訪問者に高単価商品や関連商品への誘導を促す施策や改善が求められます。
例えば、1週間のアクセス数が月間1,000ユーザー、購入率が3%、客単価が3,500円の場合、1週間の売上は105,000円となります。ここで仮にアクセス数が2倍の2,000ユーザーに増加すれば、単純に売上も倍増します。一方、アクセス数は変わらず商品ページを改善して購入率が5%に上がった場合、売上は175,000円に増加します。もちろん、客単価が上昇すれば、売上も同時に増加します。
全ての指標に対しての対策を一度に行うと何か効果的だったのかが不明瞭になるため、優先順位と期間を決めて最も売上アップに直結しそうな指標を絞ってみるということも効果的でしょう。上記数式による指標はシンプルではありますがサイトの特徴や自社サイトの現在地を知るにはとても有効です。
まずはこの指標データを定期的に確認することから取り組めば、運営しているECサイトの課題を含めた特徴を把握しやすいでしょう。
ECサイトの分析のやり方・手順
ECサイトのデータ分析は、以下4つの手順が一般的です。ここでは、それぞれの手順について解説します。
①目的と課題の設定
はじめに運営しているECサイトの特徴や性質を理解した上で、分析の目的を設定します。「集客が不足している」「商品ページでの離脱率が高い」「SNSからの流入を増やす」など、最初に達成したい目標や解決したい課題を具体的に決めることで、沢山の視点がある中でどのデータに注目したら良いかを明確にすることができます。
②データの収集と解析
アクセス数、滞在時間、コンバージョン率など、目的に沿って必要なデータを収集します。収集したデータを解析し、パフォーマンスの評価や改善点の特定を行います。
「集客が不足している」という課題を解決したい場合には現状の定常的なアクセス数とその経路の内訳に注目してみるなど、関連のあるデータを指標にするということがポイントです。
③改善策の実践
分析結果に基づき、仮説を立てて具体的な改善策を実施します。
例えば、データから新規購入率が高くリピーターに繋がらないショップは、既存顧客へのアプローチが「売上向上」のための改善策として検討できるでしょう。
その後、既存顧客へのメルマガ送付や、商品配送後のフォローメール徹底などリピーターにつながる改善策を具体化して実行していきます。
④効果の評価
改善策を行ったら終わりではありません。その後データ分析を行い、施策の実践前後で課題であった「集客」と「売上」にどのような変化があったのかを分析し、その施作は有効なのかどうかを検証します。
例えばアクセス数は上がったが購入には至らなかった場合は、商品ページの情報が不足していたのではないかなど、実施結果からまた新しい課題やヒントが生まれます。
このようにECサイトの改善は、①〜④のサイクルを繰り返しながらより改善できる案を検討し実行し続けるフローが大切です。
初めから予想通りの結果にならなくても、トライ&エラーを繰り返すうちに正しい改善の方向がわかり確実に課題解決に近づきます。大切なのは、改善策の効果を常にデータで評価し、その結果に基づいて次のステップを計画することです。
失敗から学び成功につなげるプロセスは、ECサイトの成長には欠かせません。
無料で使えるおすすめのECサイト分析ツール
ECサイトの分析には、様々なツールが利用できます。ここでは、無料で使えるおすすめのツールを紹介します。
①Googleアナリティクス
Googleが提供する無料のアクセス解析ツールで、ECサイトの訪問者数、流入経路、アクセス数、ユーザーの滞在時間、コンバージョン率など、さまざまなデータを取得できます。
計測したいウェブサイトをGoogleアナリティクスに登録することで、データ計測を開始できます。Googleアナリティクスの設定や利用方法に関する書籍やブログ記事も多く、カートシステムごとにマニュアルが整備されていることも多いため導入のしやすさも特徴です。(ただし、より詳細で高度なデータ解析を行う場合は、継続的な学習が必須となります)
②Googleサーチコンソール
Googleアナリティクスは主にウェブサイト訪問後のユーザー行動を分析しますが、Googleサーチコンソールは検索キーワードや掲載順位など、訪問者がウェブサイトに訪れる前のデータを取得し分析するツールです。
GoogleアナリティクスとGoogleサーチコンソールの両ツールを併用することで、訪問者の流入前からサイト内での行動、さらには最終的なコンバージョンまでの流れを包括的に理解することができます。
ECサイト分析に取り組みやすくなるポイント
分析と聞くと難しいと感じる方もいるかもしれませんが、まずは日々のアクセス数をモニターするなど継続できることから始めてみることが大切です。
例えば、突然アクセス数が増加し売上も向上した場合、商品に関連するキーワードがテレビなどのメディアで取り上げられていたといった予想外の外的要因が影響していることがよくあります。そのアクセス数の増加があったタイミングを手がかりに、さらに分析や調査を進めることで、「なぜ売れたのか」という理由を明らかにし、それを今後の戦略に活かすことが可能です。
このように、「なぜ売れたのか」という売上が好調な理由を不明確なままにするのではなく、通常とは異なる動きに敏感に反応できることこそが非常に重要なポイントです。
ECサイトの分析やデータを見ることに慣れるには、「定期的にデータを見る」ことに取り組んでみてください。まずは1週間に1回で構いません。難しく考えすぎず、継続できることを前提に取り組みやすい方法から始めるだけでも売上向上のヒントや課題を見つけることができるでしょう。
【コラム執筆者】
YAGUI 伊藤 忍
●YAGUI ONLINE