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ECサイト開設、どこが良い? 自社にあったサービスを選ぶには

はじめに

インターネットを活用してビジネス拡大を目指す企業にとって、ECサイト(ネットショップ)の開設は不可欠です。しかし、初めてECサイトを立ち上げる際には、どのサービスを利用すべきか迷うことが少なくありません。多くの人が最もコストパフォーマンスが良く、使いやすいサービスを選びたいと考えていますが、どのサービスにもメリットとデメリットが存在します。本稿では、ECサイトを開設する際に確認すべきポイント、各サービスの特長、適切なサービスの選定方法、そして開設後に注意すべき事項について詳しく解説いたします。

E Cサイトを開設する2つの方法

インターネットでお店を作るには、大きく分けて下記の2つの方法があります。

  • ECモールへの出店(E Cモール型)→「Amazon」「楽天市場」など
  • E Cサイト作成サービスの利用(独自ショップ型)→「BASE」「カラーミー」「Shopify」など

E Cモール型は、多数の店舗が並ぶモール内の一店舗として出店することです。デザインや機能面でのカスタマイズが制限されるものの、モール自体の高い知名度から一定の集客が期待できるという利点があります。

独自ショップ型は、モール内での出店ではなく、作成サービスを利用して自社のネットショップを立ち上げることです。自由なデザイン性を活かして自社のイメージを最大限に表現したサイトを構築することも可能です。ブランディングを想定している場合は独自ショップ型がおすすめです。

各サービスのメリット・デメリット

ECサイトを開設するための主要なサービスには、以下のようなものがあります。

①E Cモール型(Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなど)

 メリット

  • 集客力が高い
  • 信頼性があり、購入率が高い
  • 初期のSEO対策をしなくてもある程度の流入が見込める

デメリット

  • 出店手数料や販売手数料がかかる
  • 独自ブランドの認知度が上がりにくい
  • 競合が多く、価格競争になりやすい

ECモール型は、郊外にある大型ショッピングモールのオンラインバージョンと考えることができます。

 

ECモール型の最大の利点は高い集客力

多くの人が休日に「特に買うものは決まっていないけれど、ショッピングモールに行ってみよう」と思うことがあるでしょう。このように「何かお得で良いものが見つかるかもしれない」という期待感は、インターネット上のモールでも同じことが言えます。さらに、当日・翌日配送などの物流の強さも、ECモール型の大きな特徴です。

競合が多く、価格競争になりやすい

デメリットとしては、自店の商品だけが検索結果に表示されるわけではないため、常に価格競争に巻き込まれるリスクが高い点があります。また、月額出店料やシステム利用料、ポイント付与の負担など、固定費が高くなる傾向があるため、中〜大規模の事業者向けであるとも言えます。

②独自ショップ型(BASE、MakeShop 、Shopifyなど)

メリット

  • 自由なデザインとブランディング
  • 初心者でも始めやすい
  • 初期費用や運用コストが比較的安い

デメリット

  • 集客力に課題があるため、ショップ毎に集客対策が必須

ネットショップ作成サービスを利用すれば、ECモールのようなショッピングモール型ではなく、独立したお店をネット上に開設できます。イメージとしては、オンライン上に一軒家の路面店を構えるようなものです。

自由なデザインとブランディング

独自ネットショップの最大の魅力は、デザインの自由度の高さです。
ECモールでは統一感を保つためにレイアウトやフォントに制限がありますが、独自ショップならデザインや文章のトーンを自由に設定することができます。

例えば、フレンドリーな言葉で親しみやすさを演出したり、シンプルなビジュアルで洗練された雰囲気を作り出したりすることも可能です。さらに、商品のパッケージやラベルとサイトデザインを統一すれば、ブランドの世界観がより伝わりやすくなり、信頼感や購入意欲の向上につながります。

「商品とお店のイメージを統一したい」「他のショップと差別化したい」と考えている方には、独自ショップ型がおすすめです。

初期費用や運用コストが比較的安いので初心者でも参入しやすい

コスト面でも独自ネットショップは有利です。ECモールは集客力がある反面、利用料金や販売手数料が高めです。一方、独自ショップは大きく以下の2つの料金プランが主流で、どちらもモール型より費用を抑えられます。

有料プラン:月額費用が発生するが、販売手数料が低い

無料プラン:月額費用は無料だが、販売ごとの手数料が高め

開業時や成長期のショップオーナーにとって、初期費用やランニングコストを抑えられるのは大きなメリットです。

最大の課題は集客

独自ネットショップの最大の課題は集客です。

ECモールなら、サイト全体の集客力によってある程度の流入が期待できますが、独自ショップは開業しただけでは誰も訪れてくれません。

そのため、InstagramなどのSNS運用、広告出稿、SEO対策を駆使し、自らお客様を呼び込む工夫が欠かせません。集客には時間と労力がかかりますが、地道な努力を続けることでブランドの認知度が高まり、安定した売上につながります。

試行錯誤を重ねながら、継続的に改善し続ける姿勢こそが成功のカギとなるのです。

初めて開設する場合に確認するところ

ECサイトを初めて開設する際には、独自ショップ型とE Cモール型2つの違いを踏まえ、以下のポイントを確認しましょう。

①目的とターゲットの明確化

  • 何を販売するのか(商品やサービスの種類)
  • 誰に販売するのか(ターゲット層の設定)
  • どのような規模で運営するのか(小規模・大規模展開)

②予算の把握

  • 初期費用、月額費用、手数料を考慮
  • 運営にかかるコスト(人件費、マーケティング費用など)

③必要な機能の確認

  • 商品管理・在庫管理機能
  • 決済方法(クレジットカード、電子マネー、コンビニ決済など)
  • 配送設定や物流システム
  • SEO対策やマーケティング機能

④運営体制の準備

  • サイト運営を誰が担当するのか
  • サポート体制の構築(カスタマーサポート、FAQの準備)

自社にあったサービスを選ぶには

どのサービスを選ぶかは、自社の目的やリソースに応じて決める必要があります。

①低コストで手軽に始めたいなら独自ショップ型

  • 小規模ビジネスやスタートアップ向け
  • ShopifyやBASE、STORESなら手軽に開設可能

②すぐに集客したいならE Cモール型

  • すでにブランドや商品がある企業向け
  • 初期投資を抑えつつ売上を確保したい場合に適している

開設してから大事なこと

ECサイトを開設した後、成功させるためには以下のポイントが重要です。

①マーケティング戦略の実施

  • SEO対策を強化し、検索流入を増やす
  • SNSや広告を活用し、認知度を高める
  • メルマガやLINE公式アカウントを活用し、リピーターを増やす

②顧客対応の強化

  • 購入後のフォローアップを徹底する
  • クレーム対応や返品対応をスムーズに行う
  • ユーザーレビューの収集と活用

③在庫・物流管理の最適化

  • 在庫切れや過剰在庫を防ぐ
  • 配送のスピードや品質を向上させる

④データ分析を活用する

  • アクセス解析を行い、課題を特定する
  • ユーザーの行動データを分析し、販売戦略を最適化する

最後に

ECサイトを開設する際は、まず自社の目的やリソースを明確にし、それに合ったサービスを選ぶことが重要です。

独自ショップ型とECモール型、それぞれにメリット・デメリットがあり、さらにサービスごとに細かな特徴も異なります。どちらを選ぶべきか迷った場合は、専門家に相談するのも一つの方法です。

また、開設後はマーケティングや顧客対応を強化し、継続的に改善していくことで、売上の最大化を目指しましょう。適切なサービスを選び、戦略的に運営することが、ECビジネス成功のカギとなります。


【コラム執筆者】

YAGUI  伊藤 忍

●YAGUI ONLINE

https://www.yagui.jp/

ECサイトに必要なSEO対策とは? 今すぐできるおすすめの対策

はじめに

ネットショップ(ECサイト)を成功させるには、検索エンジンで上位に表示され、多くの人に訪れてもらうことが大切です。そのために欠かせないのがSEO対策です。

特に、楽天やAmazonのようなショッピングモールではなく、独自のECサイトを運営している場合、サイトデザインは魅力的でもSEO対策が不十分なケースをよくみかけます。

実際に、「デザインにこだわったのに売上が伸びない」という相談の多くは、SEO対策が十分に行われていないことが原因です。どんなに見た目が良くても、訪問者が少なければ売上にはつながりません。 だからこそ、適切なSEO対策が必要です。

本稿では、「なぜSEO対策が大切なのか」・「すぐに実践できるおすすめのSEO対策」についてわかりやすく解説していきます。

ECサイトになぜSEO対策が必要なのか?

SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)とは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンで自社のサイトを上位表示させるための施策のことです。

ECサイトでは、多くのユーザーが商品を探す際に検索エンジンを利用するため、SEO対策は集客や売上に大きく影響します。

SEO対策を行うことで、

検索結果の上位に表示され、広告費をかけずに集客できる

サイトの信頼性が向上する

長期的な売上の安定につながる

など、多くのメリットがあります。

リスティング広告とは異なり、SEO対策は継続的に実施することで、安定した集客効果が期待できるので、ECサイト運営において欠かせない施策の一つです。

すぐに実行できるECサイトのSEO対策

ECサイトのSEO対策には、以下の3つのパターンがあります。

①ECサイト全体のSEO対策

 サイト構造の最適化

ディレクトリ構造(URLの階層)を整理すると、SEO評価が向上し、ユーザーも目的のページにたどり着きやすくなります。

☑︎ シンプルでわかりやすいURLにする

× 悪い例: example.com/cat123/prod45678(意味不明な英数字)

○ 良い例 example.com/shoes/sneakers(カテゴリと商品が明確)

意味のない表記(?id=123 など)を避け、「カテゴリ → 商品」のように階層名とリンクさせたURLになるよう工夫しましょう。日本語表記は文字化けする可能性があるため、英語表記が望ましい。

☑︎ クローラー対策として階層をできるだけ浅くする

× 悪い例(深すぎる):
example.com/category/mens/shoes/sneakers/running/adidas/model123

○ 良い例(適切な階層):

example.com/shoes/sneakers/adidas-model123

検索エンジンのクローラーは、サイトを巡回し、検索順位を決める要素を収集します。しかし、サイトの階層が深すぎるとクローラーが回りづらくなり、Googleの検索結果に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、サイトの階層は3~4階層以内に収めるのが理想的です。

☑︎パンくずリスト」でナビゲーション強化

「ホーム > シューズ> スニーカー」などのパンくずリストを設置すると、ユーザーは自分の位置を把握しやすく、必要な情報を見つけやすくなります。また、構造化されたパンくずリストはクローラーのサイト理解を助け、インデックスの高速化にも貢献します。

モバイルフレンドリー対応

パソコン向けのレイアウトやデザインをそのまま使用すると、モバイル端末のユーザーは操作が難しくなり、離脱してしまうリスクが高まります。そのため、モバイル端末に適したウェブサイトの設計が必要です。最近ではほとんどのサイトがモバイルフレンドリーに対応していますが、未対応の場合は早急な改善が求められます。

ページの表示速度改善

表示速度が1秒遅れるだけで、ユーザーが離れてしまうリスクが高まります。また、サイトの表示速度は、ユーザーの満足度だけでなく、検索エンジンの順位にも大きな影響を及ぼします。表示速度を向上させるためには、まず画像データのサイズを見直すことが効果的です。必要以上に大きな画像を使用しているサイトは多く存在します。ページの読み込みが早くなることで、ユーザー体験の向上も期待できるでしょう。

②商品ページのSEO対策

タイトルタグ・ディスクリプションの最適化

ディスクリプションとは、ウェブサイトのページ内容を簡潔に説明したテキストのことです。これを設定することで、検索エンジンに「このサイトはどんな内容か」「何を解決してくれるのか」を伝え、ユーザーが検索結果でサイトを見つけやすくなります。検索されやすいキーワードを使い、クリックしたくなるようなタイトルや説明文にすることが重要です。

商品説明の充実

Googleはユーザーにとって価値のある情報を提供するページを重視しています。そのためECサイトでは商品ページの充実が不可欠です。商品名や価格といった基本情報に加え、サイズ、素材、使用方法、ユーザーの感想など、必要な情報をできるだけ多く掲載しましょう。食品ならおすすめレシピなども効果的です。また、商品開発の背景といったオリジナリ性が高くユーザーの興味が高い情報を加えることは商品への安心感につながり購入の決め手になりやすいです。

ただし、ECサイト商品ページにおいて3,000文字を超える長文は、Googleが「読み物」と見なして適切に表示されないこともあるので注意が必要です。

情報は適度にまとめ、ユーザーに必要な内容を簡潔に伝えることがECサイトのSEO対策において重要なポイントです。

商品画像を充実させる

SEO対策には、サイズ感や素材、商品の使用シーンや調理イメージ、配送時の荷姿など、ユーザーが商品を理解しやすくするために、複数の写真を商品ページに掲載することが理想的です。それぞれの画像には、内容を説明するテキスト「alt属性」を設定することを忘れないようにしましょう。「alt属性」を設定することで、Googleのクローラーが画像の内容をより正確に理解し、SEO評価の向上にもつながります。

③コンテンツSEO対策

 コンテンツSEOは、ユーザーに価値ある情報を提供し、検索エンジンでの上位表示を目指す戦略です。ただ単にキーワードを詰め込むのではなく、ユーザーの疑問や悩みを解消する質の高いコンテンツを制作することがポイントです。

また、適切なキーワードをタイトルや見出しに組み込み、内部リンクを工夫することで、SEO効果を向上させることが可能です。役立つ情報を継続的に提供することで、検索エンジンからの評価が高まり、長期的な集客につながります。

ブログやコラムの活用
コンテンツSEOで成功するには、ユーザーのニーズに応えるだけでなく、自社ECサイトと関連性の高いコンテンツを作ることが重要です。

Googleは、サイトの専門性とコンテンツの一致を評価します。例えば、ベビー用品のショップが「人気のスイーツ」という記事を書いても、ユーザーには関連性が低く、クリックされにくいでしょう。しかし、「出産祝いのお返しに喜ばれるおすすめスイーツ」ならどうでしょうか?ベビー用品のユーザー層にとって有益な情報となり、自然とクリックされやすくなります。

このように、ECサイトでは取り扱い商品やジャンルに沿った記事を作成することが大切です。関連性のあるコンテンツを発信することで、サイトの専門性が高まり、他社との差別化にもつながります。

内部リンクの強化
自社サイト内の関連ページを積極的にリンクでつなぎ、内部リンクの最適化を進めましょう。例えば、関連商品やおすすめレシピのコラムから商品ページへリンクを設定すると、SEO評価が向上し、ユーザーの回遊率がアップします。これにより、検索順位の向上やユーザー体験の改善が期待できます。

内部リンク対策のメリットは大きく2つです。

① 検索エンジンがページ同士の関連性や重要度を正確に判断できるため、検索順位の向上が期待できる。

② クローラーが内部リンクをたどり、サイトを効率的に巡回することで、インデックスされやすくなる。

適切な内部リンクを設定することで、サイト全体の評価を高め、より多くのユーザーにリーチできるようになります。

④その他の取り組みたいSEO対策

 基本的なSEO対策に加えて、以下の施策を取り入れることで、サイトの評価向上や集客力アップが期待できます。

  • 被リンクの獲得
    信頼性のあるサイトからのリンクを増やし、検索エンジンの評価を高める。
  • SNSの活用
    TwitterやInstagramなどのSNSで商品ページを拡散し、アクセス数を増やす。
  • Googleマイビジネスの活用
    店舗を運営している場合、Googleマイビジネスに登録し、ローカルSEOを強化。
  • 口コミ・レビューの強化
    ユーザーのレビューを増やし、信頼性を向上させる。

ECサイトでSEOを行う際の注意点とポイント

  • キーワードの乱用を避ける
    不自然にキーワードを詰め込むと、逆に検索エンジンの評価が下がる可能性がある。
  • 重複コンテンツを作らない
    同じ内容のページが複数あるとSEO評価が分散され、検索順位が下がる。
  • 過度な被リンク対策をしない
    不自然なリンクの増加はペナルティを受ける可能性がある。
  • 定期的な分析と改善
    Google Search ConsoleやGoogle Analyticsを活用し、SEOの効果を定期的に分析。

ECサイトのSEO対策では「ユーザーの検索意図を理解し、適切なコンテンツを提供すること」が最も重要だとされています。また、検索エンジンのアルゴリズムは常に変化しているため、最新のSEO情報を取り入れながら、継続的に対策を行うことが成功の鍵です。

最後に

ECサイトのSEO対策は、集客に欠かせない重要な施策です。Googleのアルゴリズムに従い、適切な対策を講じることが成功の鍵となります。

まずは「ECサイト全体のSEO」「商品ページのSEO」「コンテンツSEO」を実施しましょう。質の高いコンテンツを提供し、ユーザーに役立つ情報を発信することがSEO成功に繋がります。最新のSEOトレンドを意識し、積み重ねを大切にして、より多くのユーザーに選ばれるサイトを目指しましょう。


【コラム執筆者】

YAGUI  伊藤 忍

●YAGUI ONLINE

https://www.yagui.jp/

ECサイト売上アップにつながる 分析手法とポイントとは

はじめに

オンラインショッピングが普及した今、ECサイト運営は重要なビジネス活動の一つです。しかし、ただサイトを公開・運営するだけでは顧客のニーズに応えきれず、売上の向上も見込めません。そこで重要となるのが、ECサイトの継続的な分析です。本稿では、ECサイトの分析についてその目的やメリット、指標となるデータと分析ツール、そして取り組みやすくするためのポイントについて紹介します。

ECサイトの分析とは?

ECサイトの分析とは、サイトに訪れた人数やその属性・行動データを収集し、現状を把握するプロセスです。

この分析から得られる情報には、サイトを訪れた人の数や、流入元(SNS経由か、Google・Yahoo!などの検索結果からかなど)、最も閲覧されているページや購入率、どのぐらいサイトに滞在していたのかなどの多岐にわたる多くのデータが含まれます。

これらのデータを分析することで、「集客が足りない」「商品ページをさらに魅力的にして購入率を向上させる必要がある」といった、売上アップや顧客満足度に関する課題や目標をより明確にすることができます。

まずは現状把握から

ECサイトの分析において最初に行うべきは、現状の把握です。

例えば日々のアクセス数が少ないのであれば、メルマガを配信するなどアクセスを増やすための施策を行います。一方で、アクセス数が多いのに売上に結びついていない場合は、商品写真や説明文の変更を検討するなど購入率改善につながる施策を検討します。このように現在売上が伸びない理由は何か、まずはその手がかりを探ります。

以下は分析データを見る際、特に大事な指標となります。これらのシンプルなデータからでもショップの特徴を知ることができ、課題を見つけるヒントは沢山あります。

▼ ECサイト分析で見るべき代表的な指標

・売上や客単価(どのぐらい売れているのか?)

・アクセス数(どのぐらいの訪問者がアクセスしているのか?)

・流入経路(どこからサイトに来ているのか?)

・コンバージョン率・購入率(どれくらいの人が購入しているのか?)

・直帰率(アクセスした人のイメージに沿ったサイトになっているかの指標)

同時に次の数式を用いて具体的な目標を設定してみましょう。一定期間ごとに確認することで実施した改善策の効果を知る目安としても活用できます。

 

アクセス数 × コンバージョン(購入)率(%)× 客単価 = 対象期間の売上総額

それぞれの数値を向上させるためには次のような施策が一般的です。

「アクセス数」向上には、SNSや広告配信を使った集客施策が効果的です。「コンバージョン(購入)率」向上には、商品画像や説明文の改善などユーザー目線での対策が必要です。「客単価」向上には、訪問者に高単価商品や関連商品への誘導を促す施策や改善が求められます。

例えば、1週間のアクセス数が月間1,000ユーザー、購入率が3%、客単価が3,500円の場合、1週間の売上は105,000円となります。ここで仮にアクセス数が2倍の2,000ユーザーに増加すれば、単純に売上も倍増します。一方、アクセス数は変わらず商品ページを改善して購入率が5%に上がった場合、売上は175,000円に増加します。もちろん、客単価が上昇すれば、売上も同時に増加します。

全ての指標に対しての対策を一度に行うと何か効果的だったのかが不明瞭になるため、優先順位と期間を決めて最も売上アップに直結しそうな指標を絞ってみるということも効果的でしょう。上記数式による指標はシンプルではありますがサイトの特徴や自社サイトの現在地を知るにはとても有効です。

まずはこの指標データを定期的に確認することから取り組めば、運営しているECサイトの課題を含めた特徴を把握しやすいでしょう。

ECサイトの分析のやり方・手順

ECサイトのデータ分析は、以下4つの手順が一般的です。ここでは、それぞれの手順について解説します。

①目的と課題の設定

はじめに運営しているECサイトの特徴や性質を理解した上で、分析の目的を設定します。「集客が不足している」「商品ページでの離脱率が高い」「SNSからの流入を増やす」など、最初に達成したい目標や解決したい課題を具体的に決めることで、沢山の視点がある中でどのデータに注目したら良いかを明確にすることができます。

②データの収集と解析

アクセス数、滞在時間、コンバージョン率など、目的に沿って必要なデータを収集します。収集したデータを解析し、パフォーマンスの評価や改善点の特定を行います。

「集客が不足している」という課題を解決したい場合には現状の定常的なアクセス数とその経路の内訳に注目してみるなど、関連のあるデータを指標にするということがポイントです。

③改善策の実践

分析結果に基づき、仮説を立てて具体的な改善策を実施します。

例えば、データから新規購入率が高くリピーターに繋がらないショップは、既存顧客へのアプローチが「売上向上」のための改善策として検討できるでしょう。

その後、既存顧客へのメルマガ送付や、商品配送後のフォローメール徹底などリピーターにつながる改善策を具体化して実行していきます。

④効果の評価

改善策を行ったら終わりではありません。その後データ分析を行い、施策の実践前後で課題であった「集客」と「売上」にどのような変化があったのかを分析し、その施作は有効なのかどうかを検証します。

例えばアクセス数は上がったが購入には至らなかった場合は、商品ページの情報が不足していたのではないかなど、実施結果からまた新しい課題やヒントが生まれます。

このようにECサイトの改善は、①〜④のサイクルを繰り返しながらより改善できる案を検討し実行し続けるフローが大切です。

初めから予想通りの結果にならなくても、トライ&エラーを繰り返すうちに正しい改善の方向がわかり確実に課題解決に近づきます。大切なのは、改善策の効果を常にデータで評価し、その結果に基づいて次のステップを計画することです。

失敗から学び成功につなげるプロセスは、ECサイトの成長には欠かせません。

無料で使えるおすすめのECサイト分析ツール

ECサイトの分析には、様々なツールが利用できます。ここでは、無料で使えるおすすめのツールを紹介します。

①Googleアナリティクス

Googleが提供する無料のアクセス解析ツールで、ECサイトの訪問者数、流入経路、アクセス数、ユーザーの滞在時間、コンバージョン率など、さまざまなデータを取得できます。

計測したいウェブサイトをGoogleアナリティクスに登録することで、データ計測を開始できます。Googleアナリティクスの設定や利用方法に関する書籍やブログ記事も多く、カートシステムごとにマニュアルが整備されていることも多いため導入のしやすさも特徴です。(ただし、より詳細で高度なデータ解析を行う場合は、継続的な学習が必須となります)

②Googleサーチコンソール

Googleアナリティクスは主にウェブサイト訪問後のユーザー行動を分析しますが、Googleサーチコンソールは検索キーワードや掲載順位など、訪問者がウェブサイトに訪れる前のデータを取得し分析するツールです。

GoogleアナリティクスとGoogleサーチコンソールの両ツールを併用することで、訪問者の流入前からサイト内での行動、さらには最終的なコンバージョンまでの流れを包括的に理解することができます。

ECサイト分析に取り組みやすくなるポイント

分析と聞くと難しいと感じる方もいるかもしれませんが、まずは日々のアクセス数をモニターするなど継続できることから始めてみることが大切です。

例えば、突然アクセス数が増加し売上も向上した場合、商品に関連するキーワードがテレビなどのメディアで取り上げられていたといった予想外の外的要因が影響していることがよくあります。そのアクセス数の増加があったタイミングを手がかりに、さらに分析や調査を進めることで、「なぜ売れたのか」という理由を明らかにし、それを今後の戦略に活かすことが可能です。

このように、「なぜ売れたのか」という売上が好調な理由を不明確なままにするのではなく、通常とは異なる動きに敏感に反応できることこそが非常に重要なポイントです。

ECサイトの分析やデータを見ることに慣れるには、「定期的にデータを見る」ことに取り組んでみてください。まずは1週間に1回で構いません。難しく考えすぎず、継続できることを前提に取り組みやすい方法から始めるだけでも売上向上のヒントや課題を見つけることができるでしょう。


【コラム執筆者】

YAGUI  伊藤 忍

●YAGUI ONLINE

https://www.yagui.jp/