前回の「経営コンサルタント直伝!PRストーリーの考え方と作り方(前編)」に引き続き、今回はPRストーリーの設計方法についてお教えいたします。
そもそもPRストーリーとは何だろうとお悩みの方は、前編からご覧ください。では、PRストーリーはどのように組み立てればよいのでしょうか?
基本的には2つのステップを抑えておけば大丈夫です。
ターゲットオーディエンス/ペルソナを設定
まずはじめに、ブランディングの過程において設定したブランドターゲットに、様々な情報を付与して、ターゲット像を明確化します。
本稿ではいったんシンプルに、それを「集団」として設定したものが「ターゲットオーディエンス」、「個人」まで落とし込んだものが「ペルソナ」と定義します。
付与する情報はほぼ共通しているためです。
付与する情報とまとめ方の一例を以下の図に示します。
出所 : タナベコンサルティング作成
ターゲットのデモグラフィック・サイコグラフィック情報から興味関心、日常的に触れる情報入手手段や購買行動まで、細かく設定していきます。
ターゲットのイメージに近い人物の写真を入れるのも良いです。
ポイントは、一人で考えないことです。考えた個人の性格・特性によるバイアスがかかってしまい、あるべきターゲット像とならない可能性があります。ターゲット像に近いことが想定されるメンバーを含む複数人でブレストを行ったり、聞き取りを行うようにしてください。
また、付与した情報の裏付けとなる調査・アンケート資料などもあると、より説得力のあるイメージ像が成り立ちます。
カスタマージャーニーの設定
続いて、ターゲットオーディエンスもしくはペルソナが、ブランドを初めて認知する状態から最終的に選択に至るまでに触れる情報入手手段と、それに伴うインサイトの変容をまとめます。これを「カスタマージャーニー」といいます。
以下に設計の一例を記載します。
まず、横軸にインサイト・行動の変容のプロセスを並べます。この際、そもそも横軸に何を設定すればよいのか分からない場合は、購買行動モデルをベースにすると良いでしょう。
基本的なモデルとして最もよく知られるものは、購買行動を「Attention=認知」 「Interest=興味関心」 「Desire=欲求」 「Memory=記憶」 「Action=行動・購入」という5つのフェーズに整理した「AIDMA(アイドマ)」モデルです。
また、このAIDMAモデルがベースとなり、インターネット普及後の基本モデルとしてよく知られるのが2005年に株式会社電通が提唱した「AISAS(アイサス)」モデルです。
AISASモデルでは、消費者の購買行動として「Attention=認知」 「Interest=興味関心」 「Search=情報収集」 「Action=行動・購入」 「Share=共有」の5つのプロセスを設定しています。
単にブランドに触れることで終わりではなく、それを気に入り(=ブランドに愛着を持つ)、「共有する」というプロセスが含まれています。
これらのモデル以外にも、時勢に合わせて様々な消費行動モデルが生まれています。施策の目的などに応じて選択してください。
本稿では、AISASモデルをベースにしたカスタマージャーニーの設計例を説明します。
まず、AISASモデルにおける「認知」 「興味関心」 「情報収集」 「行動・購入」 「共有」を並べます。
次に、縦軸に「現在のインサイト」 「タッチポイント」 「コンテンツ」 「接触後のインサイト」を並べます。そして、これらをマトリクス化します。
出所 : タナベコンサルティング作成
あとは、この図を埋めていく作業を進めます。
「現在のインサイト」には、顧客が現在困っていること・もっとこうなれば良いのにと考えている願望を記載します。
例えば、認知の列では「〇〇に困っているが、現在使用しているブランドではそれが叶えられない」などという内容が考えられるでしょう。
次に、「タッチポイント」では、各プロセスの達成に向けてターゲットが接触しうる情報入手手段を記載します。「認知」を促すのであれば、テレビCMやウェブ・SNS広告、広報・記者会見などが考えられますし、「検索」の段階であればより詳しく情報を提供する必要があるため、自社ウェブサイトやブランドLPの構築、あるいは、長尺の動画の活用などが検討の対象となります。
「コンテンツ」ではターゲットの目線に立ち、課題・ニーズを持つターゲットに”刺さる”であろう訴求内容や施策を記載します。
例えば、「共有」してもらうためには、繰り返しブランドに触れてもらってブランドに愛着を持ってもらう必要があります。そこで、継続的に使用することでインセンティブが得られるキャンペーン実施するといった手が考えられます。
最後に、「接触後のインサイト」では、タッチポイントに触れることで、ターゲットのインサイトがどう変化するのかを記載します。例えば、タッチポイントでインフルエンサーを使用することがふさわしいとなった場合には「〇〇が使っているなら自分も使ってみたい」というような内容になります。
本稿では消費行動モデルをベースに、縦軸もシンプルなものを採用しています。よって、設計していく中で、しっくりこないものがあったり、他にもプロセスがあるのではないか、という場合には追加・修正してください。
あくまで目的は「ブランドを初めて認知する状態から最終的に選択に至るまでに触れる情報入手手段と、それに伴うインサイトの変容」を整理することです。
例えば、さきほど「共有」のコンテンツとして、ブランドとの継続的な接触を促すキャンペーンを例に挙げましたが、その前に「愛着」というプロセスを追加してそこにキャンペーンを設定、「共有」にはECサイトへ口コミ投稿してもらうためにさらなるインセンティブを与える別のキャンペーンを設定するということも考えられます。
上記の過程を経て設定されたカスタマージャーニーの中から、ブランドの現在のポジション・予算・時期などに合わせて最適と考えられるPR手法を採用していただければと思います。
皆さんいかがだったでしょうか?後編では、これらを踏まえた魅力的なPRについてお伝えいたします!